2012年3月30日金曜日

市営ときわ台団地

福岡県北九州市小倉北区朝日ヶ丘
ツインコリダー数: 1棟(住棟番号表記上は2棟)
形状区分: 片廊下型住棟連結型 / 片面デコピット / 住棟番号スプリット型 
供給区分: 市営
築年代: 昭和48年
撮影: 2011年3月



ここはですね、よく見るとスタイリッシュで可愛いんですよ。
アラサー女子向けファッション誌みたいなツイコリです。
雑誌にもツイコリにもアラサー女子にも謝れと言われそうだけど。

手前のゴチャゴチャした遮蔽物と一緒に見ると、何かいかついですよね。
これはこれで味のある景色なのですが、そこを敢えて、
脳内で遮蔽物を取っ払って見てください。

スタイリッシュで可愛いでしょ?
春、デキるオンナの愛されコーデ!みたいな。

ここを実際に見知っている人は、え?そう見る!?
って驚くかもしれないけど、僕はそう見ました。




↑左の "市-4"と"市-5"が住棟番号スプリット型のツイコリで、
片廊下型住棟の"市-3"と"市-2"が屈折して連結されてます。

つまり、ものすごく長い。




↑南側から見た立面。
カラーリングが緑のグラデーションになってて、春色お洒落コーデで決まり!な感じです。
コーデって言いたいだけだろ。

いやほんと、このカラーリングは大阪市営あたりに見習って欲しいぐらいの美しさ。




↑妻側の正規ビュー。
公営に多い住棟番号スプリット型。
は、いいとして、なぜデジタルフォント!?

電光表示ならぬ、壁に直描きというアナログな手段でデジタルフォントというアナクロニズム。
そしてその横には、木と鳥を可愛くあしらったワンポイントコーデ。
やばい、コーデにハマってきた。てへぺろ。
(何がてへぺろだ)

それにしても、白地に黄緑の住棟番号、そして茶色のデコピット
このカラーリングのセンスは好きです。

ヒサシのない開口部が並んでいるのといい、ダストシュートと思しき煙突状の角柱といい、
タイル補修跡のサイバー感といい、造形のデザイン性も、団地好きの心を揺さぶるクオリティだと思います。




↑意外と大きくせり出しているデコピット。
何でこうなるかと言うと、階段室を外側に持ってきたからですね。
普通は、階段室を吹き抜け側に持ってくるプランが多いです。

まあ、おかげで何かかっこいい形になってくれてるし、問題ないですけど。

では、内部の吹き抜けを見てみましょう。



↑これはエレガント。
恋も仕事もデキるOLの見本コーデ!みたいな吹き抜けですよね。
もう、コーデと言いたくてしょうがない。

まず、奥のコーナーが面取りしてあるのが良いです。
これは、廊下の角を曲がりやすいようにという意図なんでしょうけど、
吹き抜けのビューに、エレガントさを醸す効果を与えます。

そして、腰壁が柵でなくコンクリ。
これは廊下の採光を少なくしてしまうのですが、
吹き抜けのビューに、シュッとした印象を与えます。

さらに、腰壁下部のところどころに、四角い凹みがあって、かなりサイバーです。
コンクリの剥落を上から塗りつぶしたようにも見えますが、高さが揃っているので、
デザインだと思いたい、思いたい。(何で二度言う)




↑どう見てもエレガントですよね。直線の美。
僕はこのコーナー面取り吹き抜けが大好きです。

ドアの色も階ごとに違っていてポップです。




↑階数標示まで、デジタルフォント。しかもでかい。
何なんでしょう、このアナクロニズムは。
アナログな手法でデジタル表示という、ミスマッチがたまらないですね。





↑ツインコリダー住棟と片廊下型住棟の屈折した連結部付近。
わりと使い道のない共用スペースが広がっています。

建物を屈折させると、その周囲に変てこな共用スペースができることが多いです。
まあいろいろ見てきてそう思うのですが、他の例はまたいずれ。




↑そのまさに連結しているところ。
開口部が複雑な形になってます。

隙き間から切り取られたような景色を見るのが好きです。




↑連結部付近から南東側を見る。
全体のカラーリングのバランスが絶妙ですよね。

上にいくほど薄くなるグラデーションは、名古屋の公団大幸東団地にも見られます。
あちらが落ち着いたベージュ色のグラデーションだったのに対し、こちらはゆるふわな緑をシャギーにあしらっているのが、ハイセンスです。

だから、何でちょいちょいファッションぽい言葉を入れてくるんだ。





↑連結部付近を、南側から見上げる。
この茶色のタワーをかぶせた感じは、広島の基町高層アパートを思わせるものがあります。
横に細長い開口部といい、市営らしからぬデザインセンス。




↑北側から見た連結部。どんだけ連結部好きなんだ。
こちらはシンプルにガシッと噛み合った感じ。




↑竣工銘盤があると助かります。
なぜなら、年代を調べる手間がいや何でもないです。

その他、上階から北九州工業地帯の工場群が見えたりして、工場萌えにはたまらない景色が味わえたりもしますが、そこは割愛します。
そういうブログじゃないので。(嗜好としては似てるけど)


というわけで、よく見るとスタイリッシュで可愛い、市営ときわ台団地のツインコリダーでした。


以上。

2012年3月19日月曜日

【ツイコリ鑑賞用語 009: スターツインコリダー(スタコリ)】

【スターツインコリダー】

スターハウス型のツインコリダー住棟を指す。
略称はスタコリ。

(定義者:CAPO)


↓スターツインコリダーである、兵庫県公社夢野ハイタウン



↓スタコリを右ウイング方向から見る。(夢野ハイタウン)

【ツイコリ鑑賞用語 008: 住棟番号スプリット型】

【住棟番号スプリット型】

ツインコリダー住棟を妻側から見たときに、左右で住棟番号表示が分かれているタイプを指す。

通常は、ツインコリダー1棟につき1つの住棟番号が割り当てられていることが多いが、
稀にこのタイプがあるのは、2つの棟を連結しているという認識の仕方に由来すると推測する。
大阪府営住宅や県営住宅などのツインコリダーに比較的よく見られる。

(定義者:CAPO)


大阪府営百舌鳥梅町住宅。住棟番号が左右で異なる。

【ツイコリ鑑賞用語 007: 両面デコピット】

【両面デコピット】

ツインコリダー住棟の妻側両面にデコピットが存在することを指す。
別表記「両面凸ピット」

(定義者:CAPO)


公団くすの木団地の両面デコピット

【ツイコリ鑑賞用語 006: 片面ピット】

【片面ピット】

ツインコリダー住棟の妻側片面のみにピットが存在することを指す。

(定義者:CAPO)



大阪市営新北島住宅の片面ピット

【ツイコリ鑑賞用語 005: 両面ピット】

【両面ピット】

ツインコリダー住棟の妻側両面にピットが存在することを指す。


(定義者:CAPO)


↓大阪市営八幡屋第二住宅の両面ピット

【ツイコリ鑑賞用語 004: アールデコピット】

【アールデコピット】

アールのついたデコピット
建築様式の"アール・デコ"とは無関係。

(定義者:CAPO)



兵庫県公社西宮田近野団地のアールデコピット



公団向島団地のアールデコピット

【ツイコリ鑑賞用語 003: スカイクロスビュー】

【スカイクロスビュー】
真下から見上げた時に空が十字架の形に見える眺望のこと。
二棟のツインコリダーピットを向かい合わせに近接配置することにより成立する。尚、シンメトリーの美しいスカイクロスビューが成立する条件として、以下の三要素がある。

1.「二棟のピットが近接している。」
2.「二棟のピットが正対している。」
3.「ピットの幅が狭い。」


(定義者:CAPO)

大阪市営瓜破東第二住宅のスカイクロスビュー。↓

【ツイコリ鑑賞用語 002: デコピット】

【デコピット】
ツインコリダー住棟側面(妻側)の出っ張っている部分のこと。
凹んでいるのが"ピット"と呼ぶのに対して、出っ張っているのでデコピットと呼んでいる。

(定義者:CAPO)

公団ひよどり台中央団地のデコピット。↓

【ツイコリ鑑賞用語 001: ピット】

【ピット】
ツインコリダー住棟側面(妻側)の溝状に入り込んでいる部分。
二本の廊下の連結部が奥に凹んでいるその凹み部分とも言える。
この部分の造形的魅力を語ることが多く、その度に「凹んでいる」「側面の溝」など呼び方が定まらなかったので用語化した。

(定義者:CAPO)



公団北砂七丁目団地のピット。↓

2012年3月17日土曜日

府営堺戎島住宅

大阪府堺市堺区戎島
ツインコリダー数: 1棟(住棟番号表記上は2棟)
形状区分: スキップフロアツインコリダー / 両面ピット / 住棟番号スプリット型
供給区分: 府営
築年代: 昭和47~48年
撮影: 2009年11月



なかなかの面構えであります。
こういう景観、昔は嫌いだったのだけど、今は好き。
縦横無尽に張り巡らされた電線も、デザインに見えてくる不思議。

このツイコリの最大の特徴は、

スキップフロアであるッ!

ってことですね。
パッと見、そうは見えないですが、まあそこは追々。

あ、戎島の読み方は「えびすじま」です。はい。




↑コーナーに、石碑と説明板がもっともらしく設置されています。
いや、もっともらしくも何も、ガチですよね。

説明板によると、この団地は、戎島紡績所という日本で2番目に早く作られた綿糸工場の跡地に建てられたそうで。
で、明治天皇もここに立ち寄ったと。
何があったかをこういう形で残すのは良いことですね。

スカスカな由緒の説明ですみません。
ここ、そういうブログじゃないもので。。(なら書くなよ)


さて、いつも通り、住棟の妻側から見ていきましょう。



 

↑府営らしいストイックさを醸してますね。
しかし、ピット部分の開口部が、歯抜けみたいになっていて特徴的な造形です。

廊下が各階になくて、飛ばし飛ばしにある・・・つまりスキップフロアであることが見てとれます。

あと、住棟番号が左右で違いますよね。
ときどきあるパターンですが、僕はこれを「住棟番号スプリット型」と呼んでいます。
いや、今考えたんじゃないですよ、決して。

では、ピットの正規アングルも見てみましょう。




↑タイルの一片に至るまで、全てが四角。
この同じディテイルの連続性は、いつ見ても魅力的。

では、吹き抜け内部を見てみましょう。



↑このときは改修工事中だったけど、かっこいいですよね。
開口部が出っ張っていて、窓はちょっと凹んでいて、変化に富んだ立面。
スキップフロアのツインコリダーでしか見られない造形。




↑ちょっと上から覗いてみた。
何をしようとしたらこうなるんだと疑問に思ったけれど、ザ・工事という雰囲気はすてき。
というか、工事してるすぐそばの住戸とか、騒音やら粉塵やら大丈夫だろうか。。




↑吹き抜け正規のアングルもこの通り。何てかっこいいんだ。。。




↑これはすげー。
廊下がスキップしているから、各階の通路がよく見えて何とも言えないグッとくる空間構成に。
コンクリートの侘びた質感もさることながら、自転車がまた人の気配を感じさせて良いですね。




↑通路から階段で住戸にアクセス。
階段で上階には登れない仕組みなので、変則的な階段室型で、複雑な構造になってます。

僕が知る限りでは、大阪府営のツインコリダーにしか、このスキップフロアツイコリは見られないです。



↑真新しいエレベーター。
土台となるプレートがなくて、直接ステンレス壁にボタンが埋め込まれてるのはレアかも。
最近のHITACHI製に似ているけど、その点が違う。。




↑東芝製でした。
新しいながらも、なかなかストイックなデザインで、ちょっと好きです。




↑吹き抜けを横断する通路。
何というか、基地みたいでかっこいい。
このそこはかとなく醸されるかっこよさを上手く説明できないのが、もどかしい!
コンクリートに萌える人なら分かるはず。
いや、たぶん分かるはず。
ひょっとしたら、共感してもらえるんじゃないかな。
ちょっと自信なくなってきたけれども。



↑ものものしい内容の貼り紙だけど、デザインは結構凝ってます。

枠の模様に感じられる拘りとか、自治会ロゴとかサブタイトルにグラデーションが掛かってたり。

さらに、遮光器土偶の顔があしらってあるのは、古墳が多い堺だからなのか。
自治会も土偶を推してくるぐらい、古墳に思い入れがあるのか。
とりあえず、遮光器土偶に拉致られて宇宙に連行されかねないので、非常識な行為はやめましょう。

って、ここまで書いて気づいたのだけど、

遮光器土偶は縄文時代じゃね?(どーん)
古墳と関係なくね?

これで僕的には全くカオスになったわけで。
一応軽く調べた感じでは、付近に縄文遺跡はないっぽいです。
ましてや遮光器土偶が出土したのは東北がメインだったはず。。

埴輪と混同しているような気がしてならないけど、まさかそんなことはないでしょう。
まさかね。ええ、まさか。




↑エレベータホールの開口部から、クレーンがドアップで。
何事!?やだ、かっこいい。。



↑どうやら、外でも工事をやっていたようで。。

それにしても、クレーンとツイコリ、何かこう男子の心を揺さぶるものがありますね。


というわけで、魅力満載スキップフロアツイコリを擁する府営堺戎島住宅でした。

以上。



2012年3月4日日曜日

市営八幡住宅

大阪府岸和田市八幡町
ツインコリダー数: 1棟
形状区分: 片廊下突き出し型
供給区分: 市営
築年代: 不明 (外観の特徴より、昭和40年代末頃と推測)
撮影: 2011年1月




見ての通り、超ストイックなツイコリです。
屋上の軒の部分を除けば、カラーリングは砂色1色。

片廊下部分(画面右)が突き出していて迫力のある妻側だけど、
全体のサイズとしてはかなり小さいツインコリダーです。


では、妻側の足元から見てみましょう。




↑こじんまりかわいいです。
エレベータが最近改修されたようで、ピカピカでそこだけ最新な感じがしますが、
それ以外は、実にストイック。





↑見上げればかっこいい。
ここの妻側で特徴的なのは、何といっても、中央を縦に貫く2枚の板状コンクリですよね。

なかなか遺跡然とした寂寞感を醸してくれていますが、
中に入るともっと凄いです。

では、内部の吹き抜けを見てみましょう。




↑これは凄い。。
ただ者ではない寂寞感を漂わせながらも、縦に貫く2枚の板状コンクリによって、
ストイックにデザインされたブリッジ。

デザインと思える要素がそこしかないのが素晴らしいです。
あ、両サイドの廊下の縦リブもデザインぽいですが、まあそれぐらいですよね。

侘びたコンクリートの質感も申し分なく美しいです。




↑何というストイックさよ。
このくつろげない感じのベンチは、ガチレンガ製の花壇と一体成型。




↑見上げたビューもすてき。
最小限のデザイン性と、材の質感、立体造形の遠近感によって生み出される寂寞の美。




↑エレベータだけは新しいフジテック製。

ボタンの数字が光るのがなかなかかっこいいですが、
それより、非常ボタンと階数ボタンの間の余白の異常な広さが素晴らしい。
金属板の質感を見てくれと言わんばかりですね。
いや、階数が少ないからこうなっただけかもしれないけど。




↑フジテックのロゴは現行のも好きですが、昔の富士山をあしらった立体的なエンブレムの方が好きですね。




↑かっけー!
このストイックな2枚の板状コンクリが、やはり最大の萌えポイント。





↑眺めや良し。
何なんでしょう、この遺跡然とした風格は。




↑ダンジョンの入り口のような、外側のアプローチ。
階段がいいですよね。
ガッガッガッ!と登り下りするわけですよ。




↑反対側の妻側も徹底して、2枚板を使ってきます。
これのせいで、こんなにストイックなのにこんなに味わい深くなるという。

おかげでほぼボケなしですよ。今回は。


というわけで、禁欲的な寂寞の美を見せてくれる、市営八幡住宅でした。



以上。